改行なし・上書きエディタをつくってみた|書くことを「平面」に戻す試み

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改行しない、という発想から

文章を書くとき、私たちはほとんど無意識に Enter キーを押しています。 改行は自然で、当たり前で、疑う余地のない操作です。

けれど、ふとしたきっかけで、 「もし改行がなかったらどうなるのだろう」 という疑問が浮かびました。

今回つくってみたのは、 改行を持たない、上書き式のエディタです。

Enter キーを押しても改行は起きず、カーソルは下へ移動するだけ。 文字はセル単位で配置され、同じ場所に書けば上書きされます。

一見すると制限だらけのようですが、 実際に使ってみると、これまでとはまったく違う 「書く感覚」が立ち上がってきました。


改行なし・上書きエディタとは何か

文章ではなく、平面に書く

一般的なテキストエディタは、 文章を「行の流れ」として扱います。 思考は上から下へ、時間順に並びます。

一方、このエディタでは、 文字は2次元の平面上に置かれます。

行と列はありますが、 「ここで改行する」という強制的な節目はありません。 あるのは、位置だけです。

その結果、文章は流れるものではなく、 配置されるものになります。

上書きという操作の意味

このエディタでは、同じセルに文字を書けば、 前の文字は静かに消えます。

削除専用の操作は、ほとんど必要ありません。 Backspace は「一つ戻る」操作として残しましたが、 Delete キーはあえて使わない設計にしました。

これは機能不足ではなく、 操作の意味を整理した結果です。

「消す」という行為を、 「過去に戻る」という一方向の操作にまとめることで、 書く行為そのものが軽くなります。


実際に触ってみる

ここまで文章で説明してきましたが、 このエディタは触ってみて初めて分かる部分が大きいです。

以下に、今回作成した 「改行なし・上書きエディタ」をそのまま埋め込みました。 クリックして、自由に入力してみてください。

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※ 画面が狭い場合は、横向きにすると操作しやすくなります。


実装して見えてきたこと

日本語入力という現実

このエディタを実装する上で、 避けて通れなかったのが日本語入力です。

canvas 上では IME(日本語変換)が安定しないため、 実際の入力は隠し textarea で受け取り、 確定した文字列だけをセルに反映しています。

結果として、日本語も英数字も、 同じ「文字配置」として扱えるようになりました。

全角文字は2セル進む

もう一つの重要な点が文字幅です。 日本語は半角と同じ幅では収まりません。

そこでこのエディタでは、 全角文字は2セル分として扱う設計にしました。

これは見た目を整えるためだけでなく、 文字の「存在感」を正しく扱うための判断です。

Enterキーの再定義

Enter キーは、改行ではなく「下へ移動」。

文章構造を変えるキーではなく、 カーソル移動の一種として再定義しました。

使ってみると、これは意外なほど自然です。


このエディタは何に使えるのか

メモと文章のあいだ

このエディタは、完成した文章を書くためのものではありません。

むしろ、 思考の断片を一時的に置く場所 としての性格が強いと感じています。

箇条書きでもなく、文章でもない。 けれど確かに意味を持つ文字の配置。

それは、メモと文章のあいだにある、 少し曖昧な領域です。

構造が先に立ち上がる

改行なし・上書きという制約があることで、 「どこに何を書くか」を自然に意識するようになります。

その結果、 内容より先に構造が立ち上がる

これは、従来のエディタでは得にくい感覚でした。


改行しない、という思想

改行は便利です。 けれど同時に、思考を一方向に流してしまう力も持っています。

改行を取り除くことで、 文章は時間から解放され、空間に戻ってきます。

それは、ノートの余白に 言葉や図を散らす感覚に近いものです。

デジタルでありながら、 紙に近い自由さを持った書き方。


まとめ:完成させないという完成

今回の「改行なし・上書きエディタ」は、 高機能なツールを目指したものではありません。

Export や高度な編集機能も、 あえて入れていません。

なぜならこれは、 思考を一時的に置くための平面だからです。

完成させるための道具ではなく、 考えるための余白。

もしこのエディタが、 「書く」という行為を少しでも軽くし、 思考の流れを止めずに済むなら、 それだけで十分なのだと思います。

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