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線形と非線形とは何か ――「足し算ができる世界」と「できない世界」
「線形」「非線形」という言葉は、数学だけでなく、物理、工学、AI、経済、気象など、さまざまな分野で使われます。
けれども、その核心はとてもシンプルです。
線形とは、「分けて、足せる」世界。
非線形とは、「分けた瞬間に壊れる」世界。
もう少し噛み砕くと、こう言えます。
線形な世界
- 入力を2倍にすると、出力も2倍になる
- Aの効果とBの効果を別々に計算し、最後に足せば全体になる
- 小さく分けて考えても、本質が変わらない
非線形な世界
- 入力を2倍にしても、出力は2倍にならない
- AとBを同時に起こすと、「Aの結果+Bの結果」にならない
- 分けた瞬間に、性質そのものが変わる
数学的には、線形とは
f(x+y) = f(x) + f(y), f(ax) = a f(x)
が成り立つことを意味します。
これは「重ね合わせがそのまま通用する」という性質です。
グラフで言えば、線形な関数は直線になります。
しかし本質は「直線か曲線か」ではありません。
直線であることが意味しているのは、
「この現象は、部分に分けて計算してもよい」
という安心感です。
たとえば、
- 音の重ね合わせ
- 光の干渉(弱い範囲)
- 回路の小信号近似
- 行列による変換
これらは「線形」とみなせるため、
複雑な現象でも「小さく分けて足す」ことで扱えます。
一方、非線形な現象では、
- 波が砕ける
- 化学反応が起こる
- 生物が成長する
- 天候が乱れる
といったように、
部分だけを見ても全体が分からず、
組み合わせた瞬間に「別の振る舞い」が生まれます。
だから人が「これは非線形だ」と言うとき、
そこには暗黙のメッセージがあります。
「これは、単純に足し算では扱えない。
分けて考えると、本質を見失う。」
線形という言葉は、
「これは分解しても大丈夫な世界だ」
という宣言であり、
非線形という言葉は、
「ここから先は、足し算が裏切られる」
という警告なのです。
「直線か曲線か」という見た目は、その結果にすぎません。
線形/非線形という言葉が本当に指しているのは、
この世界は、バラして足せるか。
それとも、バラした瞬間に壊れるか。
その境界線なのだと思います。


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