3Dで「揺れる電灯」をつくってみた
ただの「光源」を置いただけでは、空間は生まれない。
今回、Three.js を使って「吊り下げられた電灯が、わずかに揺れ、その影が部屋全体に波紋のように広がる」風景をつくってみたとき、強くそう感じた。
画面の中には、床と壁、いくつかの箱、そして天井から下がる電灯があるだけだ。 それなのに、しばらく眺めていると、「そこに部屋がある」という感覚が立ち上がってくる。 揺れに合わせて、床の明暗がゆっくりと移動し、壁の影が呼吸するように変わっていく。 それは単なるCGではなく、どこか遠くの空間を“覗いている”ような体験に近い。
※ マウス操作で視点を少し動かせます。しばらく眺めてみてください。
電灯は「物体」ではなく「現象」だった
最初は、単に天井からコーン形状を吊るし、下にライトを置くだけのつもりだった。 しかし、やってみるとすぐに違和感が生まれる。
- 傘で隠れているはずの場所から光が漏れる
- 電灯の真下に、不自然な影が落ちる
- 揺れているはずなのに、空間が動いて見えない
そこで気づいたのは、電灯は「形」よりも「ふるまい」で成立しているということだ。 現実の電灯が“電灯らしい”のは、傘の内側で反射した光が下に広がり、 揺れに応じて、影と明るさがゆっくり移動するからだ。
今回は PointLight ではなく SpotLight を使い、 「下方向だけに広がる円錐状の光」をつくった。 さらに、電球や傘自身が床に影を落とさないよう調整することで、 “電灯の下に黒い点ができる”という不自然さも消している。
こうした調整は、物理的に正しいというより、 「人がどう感じるか」を優先したものだ。 結果として、画面の中に“静かな空気”が生まれた。
揺れは「運動」ではなく「時間」をつくる
電灯の揺れは、単なるサイン波ではない。 振り子のように減衰しつつ、わずかな不規則性を混ぜている。
すると、揺れは「動き」ではなく「時間の流れ」として知覚される。 規則的すぎる運動は、ただのアニメーションに見える。 しかし、少しだけ乱れた揺れは、 「風があるのかもしれない」「誰かが通ったのかもしれない」という想像を呼び起こす。
影がゆっくりと移動する様子は、 空間そのものが呼吸しているようにも感じられる。 ここで描かれているのは、物体ではなく“気配”だ。
3Dは「操作するため」だけのものではない
3Dというと、多くの場合「操作」や「効率」が目的になる。 エディタ、ゲーム、シミュレーション、UI。 しかし今回の電灯は、何も操作させてくれない。
ただ、そこに在るだけ。 眺めることしかできない。
それでも、そこには確かな価値がある。 人は、動かせない風景からも多くを受け取る。 焚き火、雨、雲、夕暮れ。 どれも操作不能だが、見ているだけで心の状態が変わる。
この「揺れる電灯」も、 デジタルでありながら、そうした“風景”に近い存在になった。
未来の3Dは「場」をつくる
これからの3Dは、 「何かをするための空間」だけでなく、 「ただ在るための空間」も生み出していくのだと思う。
作業する部屋、思考する部屋、休む部屋。 現実の部屋と同じように、 デジタルの中にも“雰囲気を持つ場所”が生まれていく。
今回の電灯は、そのごく小さな一歩だ。 けれど、 「3Dは道具である前に、風景になれる」 という感覚を、確かに教えてくれた。
まとめ
3Dで電灯を揺らしてみた。 それだけの試みが、 思いのほか深い体験になった。
光が揺れ、影が動き、 画面の中に“時間”が流れ始める。 そこには、 操作でも効率でもない、 「ただ在る」という価値がある。
デジタルの世界にも、 眺めるだけの場所があっていい。 むしろ、これからは、 そうした場所こそが増えていくのかもしれない。


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