テキストエディタを3Dにしてみた|「書く」という行為が空間になる瞬間

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テキストエディタを3Dにしてみた

文章を書くという行為は、長いあいだ「平面」の上で行われてきました。紙、ノート、ワープロ、テキストエディタ、ブログの管理画面──どれも本質的には二次元です。縦にスクロールし、横に行を追い、カーソルという一点を頼りに思考を進めていく。その形式はあまりにも自然で、疑う対象にすらなっていません。

では、もし「文章が空間を持ったら」どうなるでしょうか。行が奥行きを持ち、段落が層になり、スクロールが“移動”に変わったら。そんな素朴な問いから、「テキストエディタを3Dにしてみる」という実験が始まりました。

※ 上は、実際に動作する「3Dテキストエディタ」のデモです。クリックして、そのまま書き始めることができます。

テキストはなぜ2Dなのか

文字はもともと平面に書かれるものです。石板、紙、ディスプレイ──どれも「面」を前提にしています。そのため私たちは、「文章とは上から下へ読むもの」「長文は縦に流れていくもの」という感覚を疑いません。

しかし、情報の量が増え、文章が巨大化した現代では、平面の制約がときに思考の枠になっているようにも感じます。何百行、何千行にも及ぶ文章を、ただ縦にスクロールして追う。構造は頭の中で想像するしかなく、全体像は見えません。

もし文章そのものが「空間」を持っていたらどうでしょう。段落が“層”になり、章が“塊”になり、思考の流れが奥行きとして可視化されたら。3D化は、その可能性を覗くための小さな窓です。

3Dにすると何が変わるのか

実際にテキストエディタを3D化してみると、すぐにいくつかの違和感と発見が生まれました。

  • カーソルは「点」ではなく、「視点の基準」になる
  • 上下移動は“スクロール”ではなく“空間移動”になる
  • 横に長い行は、2Dよりも強く「読みにくさ」を生む

特に印象的だったのは、カーソルの扱いです。2Dエディタでは、カーソルは単なる入力位置にすぎません。しかし3Dでは、カーソル行を中心に視点を固定し、その前後に行が広がる構造になります。すると「今どこにいるか」が、感覚的に掴めるようになります。

これは、文章を「流れ」としてではなく、「空間の中の位置」として捉え始める感覚です。書いている自分が、文章の中を“歩いている”ような印象すら生まれます。

ただのギミックでは終わらせないために

3D化は、派手で面白い反面、簡単に「見た目だけの遊び」に堕ちてしまいます。入力できない、コピーできない、IMEが使えない、Undoが効かない──そうなった瞬間、それは「おもちゃ」になります。

今回の試みでは、内部に通常のテキストエリアを持たせ、コピー・ペースト・IME・Undo/Redoといった“当たり前”の機能をすべて維持しました。見た目は3Dでも、エディタとしての芯は2Dの強さを借りています。

その結果、「3Dでも、普通のエディタとして成立する」という事実がはっきりしました。これは小さなことのようで、実は大きな意味を持ちます。なぜなら、これでようやく「3Dならではの編集体験」を安心して探せる土台が整ったからです。

文章が空間になる未来

将来的に考えられるのは、単なる“縦に並んだ行”を超えたエディタです。

  • 段落をブロックとして掴み、空間上で並べ替える
  • 章ごとにエリアを分け、俯瞰して構成を眺める
  • 思考の塊を「島」のように配置する

それはもはや「文字を打つ道具」ではなく、「思考を配置する空間」になります。ノートでも、アウトライナーでも、マインドマップでもない、新しい書くための環境です。

3Dテキストエディタは、単に派手なUIを目指すものではありません。文章という抽象的なものを、もう一段階、身体感覚に近づける試みなのだと思います。

まとめ

テキストエディタを3Dにしてみるという発想は、一見すると奇抜に思えるかもしれません。しかし実際に作ってみると、そこには「文章とは何か」「書くとはどういう行為か」という、根本的な問いが潜んでいることに気づかされます。

2Dが悪いわけではありません。むしろ、2Dエディタは完成度の極みにあります。だからこそ、その“完成形”を一度そのまま3Dに移植できたこと自体が、大きな意味を持ちます。

ここから先は、「3Dである必然性」をどう生かすかの領域です。文章が空間になり、思考が配置できる世界。そこには、まだ名前のない、新しい“書く”体験が眠っています。

テキストエディタを3Dにしてみた──それは単なる実験ではなく、「書く」という行為の未来を、ほんの少しだけ覗き込む試みだったのかもしれません。

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