導入|なぜか「きれいだ」と感じてしまう増え方
指数関数について考えると、多くの人はどこか身構えてしまいます。
計算としては理解できる。
けれど、「増えていく感じ」はまったく掴めない。
ところが、ある可視化アプリを触っていると、不思議な体験が起こりました。
e進数を選んだ瞬間、理由を考える前に、
「あ、きれいだ」
と感じてしまったのです。
増え方が一定だとか、微分しても形が変わらないとか、
そういった知識を思い出す前に、目がそう判断してしまう。
なぜ、人は説明できないのに美しさを感じるのでしょうか。
この記事では、「桁数を実感するアプリ」を手がかりに、
位取り記数法の限界と、e進数がもつ不思議な自然さについて考えてみます。
基礎解説|位取り記数法は正確だが、イメージしにくい
桁が増えるとはどういうことか
私たちは普段、10進数という位取り記数法を使っています。
- 10 = \(10^1\)
- 100 = \(10^2\)
- 1000 = \(10^3\)
この表記は非常に優秀です。
計算もしやすく、情報としても正確です。
しかし一方で、桁数そのものを実感することは極めて難しい。
1 と 1000 を並べると、「1000倍違う」という情報は理解できます。
けれど視覚的には、1 はほとんど消えてしまい、差としては認識できません。
人間は「比」を直感できない
人間の感覚は、差には強く、比には弱い。
- 1 と 2 の違いは分かる
- 1 と 10 の違いも分かる
- しかし 1 : 1000 になると、ほぼ判別不能になる
その結果、1000 と 10000 の違いは、
頭では理解できても、目ではほとんど同じに見えてしまいます。
位取り記数法は正確ですが、
指数の世界を「感じる」ための表現ではないのです。
応用・背景|桁数を「距離」として体験する
指数を空間に置き換える発想
このアプリでは、指数を次のように対応づけています。
- 選択した基数n → 中心からの距離
- n → 螺旋の周回数
- 桁の区切り → x軸との接点
数は、もはや記号ではありません。
位置と運動として存在します。
これにより指数は、
「急に増えるもの」ではなく、
一定のルールで外へ広がっていく現象として体験できるようになります。
実際に触ってみる|指数を「距離」として見る
以下は、桁数を距離と回転で可視化したアプリです。
基数を切り替えながら、指数の増え方を体感してみてください。
※ スマートフォンでは横向き表示がおすすめです。
e進数を選ぶと、なぜか「引っかからず、きれい」に見えることに気づくかもしれません。
なぜ e進数だけが特別に見えるのか
2進数や10進数を選ぶと、螺旋にははっきりしたリズムが生まれます。
接点ごとに「区切り」が強調されるからです。
一方、e進数ではその感覚が薄れます。
- 特別な節目がない
- どこを切っても同じ増え方
- 回転と距離が常に同じ調子で進む
e は約 2.718… という中途半端な数ですが、
変化率が常に一定になるように定まった数です。
だからこそ、
理由を考えなくても、
「引っかからない」「自然だ」「きれいだ」と感じてしまう。
e進数は特別なのではありません。
ただ、自然なだけなのです。
社会的意義・未来|指数を実感できるということ
感染症の拡大、複利、情報拡散、AIの性能向上。
現代社会は指数現象に満ちています。
しかし指数を直感的に理解できないと、
- 「まだ大丈夫」と思ってしまう
- 変化の初期を見逃してしまう
という判断ミスが起こりやすくなります。
桁数を実感できるということは、
指数的な世界を正しく捉えるための基礎体力そのものです。
位取り記数法は偉大な発明ですが、
それは「計算のための表現」です。
距離や運動による可視化は、
理解のための新しい補助言語になり得ます。
まとめ|指数は、見えたときにはじめて理解できる
e進数が美しく見えるのは、
特別な魔法があるからではありません。
他の進数が、人間の都合で「区切り」を作っているだけ。
e進数は、その前提を外しているにすぎません。
桁数を距離として眺め、
回転として感じるとき、
指数は初めて「分かるもの」になります。
増え方が一定だと気づかなくても、きれいだと感じる。
それは、人間の感覚が、
自然な変化にちゃんと反応している証拠なのかもしれません。


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